Friday, May 9, 2008

おそいひと

十三の七藝に、西宮の障害者、住田さんが主演している『おそいひと』を見に行って来た。
9時からのレイトショーなので、やまもとで、すじネギ焼きでビールを一杯やってから行く。卵が多めの生地がやわらかくおいしい。ふだんは西宮市内で暮らしているので、たまにこんな時間に大阪へ出てきて、隣の方で、ドラマに出てくるようなサラリーマンの人たちが、会社や仕事の話しをしているのが妙に新鮮に感じる。

じつはこの映画のエキストラとして、おそらく5~6年前くらいだったと思うけれど、利用者の男の子と一緒に狩り出されて行ったことがあって、その後完成したという話しも聞かなかったし、なんとなく時間とともに忘れてたのが、先日七藝のサイトをチェックしているといきなり上映の予告があってびっくりした。
主演の住田さんは、ぼくが働いている団体とはまた別の西宮の障害者団体の事務局長で、ぼくはこの映画にも出てくる、そこの代表の福永さんの介助に1年くらい入っていたから、住田さんにも何回か会ったことがあった。

エキストラに行ったときは、どんな映画を作っているのかまったく分からなく、たぶん少し寒い時期で、早く終わってくれないかなって思って待っていたくらいだったと思う。今日はじめて、仕上がった作品を見ると、想像していたものとまったく違っていて驚いた。
まず、色彩がぜんぶ落とされて、モノクロームになっていて、所々最近のデジタル技術を使ったギミックで、映像がデフォルメされている。住田さんの特徴的な顔がクールでうまく仕上げてあると思う。障害者の映画というのは、無意識にドキュメンタリーか、それに類するものと思いこんでいるから、これだけでも、なかなかじゃないかと思った。
映画は、住田さんと大学生の介助者の女の子との交流が、恋心めいたものへと移る前半と、それが叶わず通り魔になって、殺人を繰り返す後半に別れる。なぜそれがいきなり人殺しってことになるのか?よくわからなかったのだけれど、最後の最後、友人たちが住田さんを驚かせようと誕生日の準備をしているところに、血みどろの住田さんが帰って来るところで、なんか監督の意図はよく伝わっていて、それはとても説得力があったと感じた。
つまり、ぼくらの団体はそれほどでもないと思っていたけれど、それでも普段かなり「いい人」モードで生きてるよなって思わされた。なんかあればケーキを用意してしまうような。まぁ、それはとてもいいことなんだけど、そんな白い感情ばかりだけじゃなくて、血みどろなものとか、どす黒いもんがあったり、そうした色んなものがあって、自然なんだろうと思う。これは、障害者をノーマルに描くという、最近の潮流とじつは、そんなに違いはないのだけれど、そこに監督流の「表現」が加わっているところが新しいと言えるか。

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