Friday, May 23, 2008

『移動の技法』#12

宿は深夜になっても交通の音でわたしのよこたわっているベッドにもその振動が伝わってくるほどであった。わたしはどこにいるのだろう。わたしの宿だ。朝寝をするために8時にやってくる朝食を夜番の親爺に断って来たところだ。何十年も使われているようにみえる木の椅子が木目の床に置かれている。(スナップ)。わたしはどこにいるのだろう。わたしの宿だ。それをたしかめよう。冷たくなった窓硝子に頬を寄せてみよう。息でそれを曇らせてみよう。(そのなかをヘッドライトが流れてゆく)。友は来ないだろう。(裏切ったのはどちらだ?)ラジオからは流行歌。繰り返し繰り返す「(裏切りの主題)」。(恋にはつねに勝者と敗者がいる....)。運動と静止。いかにして「移動の技法」はそこなわれるのか。ホテル・ビクトリア1992年7月5日。

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