Wednesday, February 21, 2007

『男たちの帝国』


図書館でたまたま見つけて借りてきて読んだ本。ヴィルヘルム2世からナチスへと副題がついて、19世紀末から現代ドイツで「同性愛者」どういう風に位置づけられ、処遇されてきたかを歴史の立場から描いたものだ。この本が他と違うのは、著者が同性愛者とカムアウトして、内容を「われわれ」を主語として語っていることだ。したがってこの本は、たんに歴史を羅列した無味乾燥なものではなく、ある箇所では、筆が熱く激高して「われわれを抹殺しようとした」と語ってしまう、一種の当事者学の本でもあった。ここでいう同性愛者とは、男性同性愛者のことである。ナチスと優生学の本を読んでいたときも、障害者がいかにそのときに政治や風潮に翻弄されていたかがよくわかったが、おなじような感想を読み終わると感じた。
現代の項で、同性愛者同士の婚姻が認められ出したのは、エイズに怯えた社会が、これ以上「一般社会」に蔓延させないように、同性愛者同士をクローズしてしまおうという意図があったという件は、本当に歴史の皮肉と偶然を思わせる。障害者の自立が、福祉にかける予算のカットから始まったことを思い出させた。

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