Wednesday, March 18, 2009

黄昏

もう先週のことだけれど、ニューヨークのサルサ・プロモーターでRMMレーベルの経営者だったラルフ・メルカードが亡くなった(*)。この2年ほど脳腫瘍のため闘病中であったということで、亡くなったのはマンハッタンの病院でだった。娘さんら家族に看取られての死であったということだ。上の写真はGoogleで検索していて出てきたもの。エクトル・ラボーの『Recordando a Felipe pirela』が出た時だから1979年か。いちばん左に映るメルカードは、67歳だったということなので、まだ30代だった。ジェリー・マスッチもいて皆の混じりっけのない笑顔がなんとも幸せそうに見える。改めて彼のバイオグラフィー(*)を読んでみると、ヴィレッジ・バンガードやチーターでのライブなどの仕掛け人として本当に天才的なプロモーターだったんだなと思う。RMMというレーベルで世界中にサルサを持って行ったのは、グローバリズムと足並みを揃えていて、それは90年代にアメリカの株が上昇していくのにもテンポを揃えているようにも見え、ぼくはRMMというサルサの帝国が支配する中で、そうでないサルサを探すというのがぼくがやることだと思ってやっていた。
ファニアがアフリカやアジアに出掛けていったのもメルカードのアイデアだったらしく、ファニアのまるで革命の輸出に見える拡大主義も、RMMの帝国主義的な覇権主義もじつは、メルカードという人物で結びついてたんだと今頃になって知る。RMMというレーベルでサルサは広く知られたのと同時に本当に無味乾燥な音楽にもなってしまった。そのことを批判的に書こうと思ったらいくらでも書けるし、ほんとはそんなことをいっぱい書こうと思ったのだけれど、ラルフ・メルカードがいなかったらおそらくサルサという音楽は、また別なポジションにあったんだなと思うとなんだかそんか気持ちは失せてきた。

No comments: