Monday, March 12, 2007

temblar(3)


「私の母、アンヘリカ・ニーマイヤーは、私たちがイングルウッドに住んでいたこの頃けっしてよい状態とは言えなかった。おそらく、だから私を幼稚園へやらなかったのだ。ほかに誰もおらず、ひとりになりたくなかったのだ。イングルウッドで、ひとりでいることは容易いことではない。母はすぐにそれに気がついた。 カリフォルニアに着いたばかしの62年、母は英語が話せず、友達もおらず金もなく、勉強をつづけることもできなかった。母は、チリで勉強を始めていた。コンセプション大学工学部の学部長だった私の祖父のように、地震学者になろうと思ったためで、同じ大学で勉強していた。しかし、ファン・ソレール、私の父は、国から出たり入ったりし、町から出たり入ったりし、母の人生から入ったり出たりしており、母の計画を変えてしまった。」
泊まり介助中、横で呼吸器くんが、ブログを書いているあいだ、訳していたLas películas de mi vidaの一節。Las películas de mi vidaは、アルベルト・フゲーの半自伝小説。地震学者である主人公が筑波大学へ出張を命じられた途中、トランジットしたロサンジェルスで、DVDを借りまくって、幼い頃見た映画で自分の人生を振り返るというのが、大まかなストーリー。引用にあるとおり、ロサンジェルスは主人公、そしてフゲー自身も幼少期を過ごした町でもある。フゲーはアメリカに住んでスペイン語で書く作家のアンソロジーを作ったこともある。この部分だけでは分からないけれど、この小説を読んでいると物語にひきこまれるというよりも、押さえた口調で、たんたんと語っていく、その語り口、文体に興奮する。

もちろん呼吸器くんは、「これからブログをつけます」などといちいち言ったりしないので、ときおり帰ってブログをチェックしていると、ちょうどなんだか横で静かだった時間帯にブログを書いていたことが分かり、なんだあのときこれを書いてたんだと思うことがある。

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