Sunday, March 23, 2008

ゲノム医療時代の鍼灸に向けて

昨年にひきつづき、神戸大学病院の筋ジストロフィー患者と家族の会の定例会[PDF]に行ってきた。ここでの研究が世界でも先端を行っているからか、昨年に増して参加するお父さんお母さんの数が多く、ほとんど座る席もないほどになっていた。昨年も下関から来ていたお母さんがいたが、今年も遠方から訪れる人もいた。プログラムは後半の懇親会の前に講演が2つ。一つは、国療八雲病院の石川医師から、最新の呼吸リハビリと、呼吸器サポートについて、そのネタになっているのは、やはり昨年兵庫頸損連絡会がやった明石での市民講座にも招かれていたジョン・R・バック博士のもので、この分野における彼の影響力の大きさがあらためて感じさせられた。しかし、呼吸器をつけての自立ということが、視野に入ってきたのとほぼ同時に、病院でも、呼吸器の重要性が認識されて、寿命も大幅に伸び、ただ療養するのではなく、仕事やこれからどうやって生きるかということが真剣に考えられ始めているのが、やはり隔離されて生きているようでも、すべてがこのひとつの社会で行われていることなんだと考えさせられた。

もう一つは、ぼくは東洋医学的なものにシンパシーを感じるので、とても興味深かったのだけれど、高岡裕さんという研究者が、鍼灸というこれまで検証不可能だった療法をゲノム解析の方法を使って実証という試みをやっていて、それを筋ジストロフィーなど筋肉が衰える病気にも使えるだろうというもの。
筋肉が発達するのを阻害するミオスタチンという遺伝子を、電気を流した針を打つことによって働かなくすることができるらしく、これはかなり臨床でも効果が出ているらしい。こんな簡単な方法で、筋力の低下が防げるなら素晴らしいことだろうと思う。論文のPDF

筋ジストロフィーをめぐって、一方で古色蒼然とした療養所があって、一歩外に出ればゲノムの最先端の医療に触れている。なんだか今の日本を象徴しているようでもある。

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