久しぶりにボリンケンさんに会った。おそらく10年前に渋谷でお会いして、その晩浦安のお宅に泊めてもらって以来のことだ。お互いインターネット上に何らかのスペースをずっと保ちつづけていて、それを折々にチェックしていて、頻繁ではないけれど電話でもやりとりがあるので、そんなに会ってなかったかのかという実感をあまり感じない。基本ネットでのつき合いでたまにオフで会う、こうした関係も今どきのものなのかな思う。
しかし、10年前にあったのは、プエルトリコの女性歌手デディ・ロメロのライブのときと記憶していたのだけれど、たしかにぼくはクト・ソトがプロデュースしたデディ・ロメロのアルバムに夢中だったし、彼女の資料を取り寄せたりして、事務所と多少連絡も取っていたので、重点は彼女にあったのはそのとおりだったが、彼女が、あの偉大なエル・グラン・コンボの前座で来ていたことをすっかり忘れてしまっていた。記憶というのはほんとに曖昧なもんだと思った。
それでもまぁ、曖昧かも知れないけれど、記憶を辿ってみると、ボリンケンさんと知り合ったのは、ニフティのラテン音楽部屋でだった。インターネットが今のように普及する以前のパソコン通信の時代だ。94年の秋頃だったと思う。コンピュータが閉じられた箱ではなく、そこを通してどこへでも行けるコミュニケーションツールになった最初の経験で、その興奮はほとんど熱狂的なものがあった。
おそらく翌年、出張で来阪の折に、最初にお会いしたのだと思う。以来、東京と大阪と離れているのもあるし、実際にお会いしているのは数えるほどだけれど、その都度、充実した時間を過ごさせてもらっている。
とくに今回はそうだろう。ぼくたちの共通の話題は、ラテン音楽だったはずなのだけれど、そのシーンはすっかり寂れてしまって語るべき事もない。なのに、延々と途切れない会話。食事をした福島のラ・ルッチョラで、外で降りつづける雨を感じながら、海老や飯蛸やホワイトアスパラガスや、苺など今一番おいしい食材が並ぶプレートを味わって、さらに会話は進んでいる。有名なボリンケン風クローズアップを実演してもらって、ぼくも一枚、苺がきれいなデザートを撮ってみたのだけれど、ここでは遠慮して、ぼくらしいショットを載せておきました。3月の雨もいい。そんな風に思える一夜でした。
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