昨日、シルビオの記事を書いた後たまたま借りてきていたイグナシオ・アグェロのドキュメンタリー『100人の子供たちが列車を待っている』を見る。1988年のチリ映画で、ピノチェットの政権がほとんど終わりかけている頃に撮られている。サンティアゴ郊外の小さな村で、アリシアという女性が、教会で子供たちに映画を教える模様を追っている。子供たちはその地区に住む経済的に恵まれない家庭から教会に通い、学校もろくに行ってない。冒頭で映画を見たことがあるかと訊かれるのだけれど、ほとんどが劇場に行ったことすらない。わずかに答えていたのが「ロッキー」だったので、80年前後の話しだろうか。
教会の映画教室といっても、そこがふつうと違うところなのだけれど、子供が歓びそうな映画を選んで見せるだけでなく、写真からエジソンとリュミエールを経て、映画が誕生する様を当時の実際の映画と、穴あきカメラや、パラパラ漫画のような実験を作ってみたりしながら、再体験しながら学んでいくのだ。最後に子供たちは、政権に抗議する映画をみんなで作るのだけれど、そこでしっかり「表現する」とは何かを彼らは学び取っていた。映画もさることながら、こうした試みが当時のチリで行われていたことが凄いことだったと思う。たしかにピノチェットの時代も終わりにかかっていて、一時はよかった景気も傾いて、政権の求心力も衰えていた時期とは言えだ。ここにはいくつかの子供時代が重なっていると思う。映画の子供時代と、子供たち。だから子供たちは違和感なく、映画の創世を学んでいく。そしてアリシアが子供たちに託した新しいチリがそこまで来ている。
それにしても、チリは少し中心を外れると、ほんとにみんな貧しくボロボロだったことを映画を見てあらためて思い出した。それはこの映画の80年代だけでなく、2003年に行ったときも変わっていなかった。おそらく今もそれは変わっていないのだろうと思う。
イグナシオ・アグエロの最近の映画がここからまるまる見ることができるようだ。
"La mama de mi abuela se lo conto a mi abuela"video→◎
"Aqui se construye"video→◎
No comments:
Post a Comment