Friday, June 6, 2008

『移動の技法』#13

ひとつの映像。窓際に佇むひとりの若い男。灰色のウールが弱い光に浮かんで背景に溶け込んでいる。そう、夜は明けたのだ。人々と車はふたたび動き出したのだ。(馴染みの両替屋が遠くに小さく見えている)。そして友はやはり来なかったのだ。そして彼はひとりでサンティアゴに帰るのだ。彼はなぜバッグを持って扉を開けて出ていかないのだろう。(ひとつの映像....)。あるいは、その木の椅子に腰かけないのだろう。それともベッドにうつぶせになってそれを愛撫しないのだろうか。(ひとつの....)姿勢。垂直の、。視線。なにも映さない、。可能なことは背後にあって彼には見えず、薄いガラス板の冷たさだけが現実を表現している。投影されたその映像。いちまいのガラス板。それが真空の空に変様するとき。部屋。ひとつの、。

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